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トランジションスリー
試合時間は残り5分、6点差で負けていた。
相手に点を入れられることなくスリーポイントシュートを連続で沈めれば追いつける。そう言うとそれほど難しいことのように聞こえないかもしれないが、実際やる立場になると、その道のりは果てしなく険しい。
その上ボールはあちらが持っていた。僕が対峙するトップの位置で、ポイントガードの選手がボールをついている。
「ディーフェンス!」
ベンチから集中を強いる声援が飛ぶ。僕はほとんど密着するように彼をマークした。
隙あらばスティールを試みようと思っているが、あまりにギャンブルなディフェンスはできない。プレッシャーをかけ、ミスを誘う。彼は上手に体を使って僕からボールを保護している。
「スクリーン!」
味方から声がかかった。どうやら敵がスクリーンプレーを仕掛けてきたらしく、僕から見て右手に邪魔が入っていることが伝えられる。
とはいえ敵がそちらから攻めてくるとは限らない。僕はスクリーンの気配を察知しながら、ボールへのプレッシャーをゆるめることなく次の展開を考えるともなしに予測する。
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