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それに今広がるまっさらな状態では分かりようがない。
「あなたにしては随分詩的な返事をしてくれたのね。もっと、科学的なコメントをしてくると思ってた」
「科学的に?」
「空があんなに青いのは光の波長のせいだとか湿度の関係だとか」
「でもそれは空が青く見える理由であって、『快晴の空を見ると虚しくなる』ことの理由にはならない」
「そうよね」
雲が1つもないから。
彼の答えはまあまあ順当だと思った。
「雲が1つもないとのっぺらぼうに見えるから、虚しいのかな?」
「確かにのっぺらぼうじゃ虚しいかもしれない」
「ポーカーフェイスのあなたが言うことじゃないのよ」
「一応目も鼻も口もあって、人の顔はしてるんだけど。それに空だってのっぺらぼうなわけがなくて、常に青く発し続ける光だからとどまって見えるだけだ。本当は常に変わってるはずだ」
「ありがとう、冷静にコメントしてくれて」
彼女はくすっと笑って、もう一度空を見上げた。
確かに少し時間が経てば雲の1つくらいは現れるだろう。
まっさらで完璧な青の背景にぽとっと白い絵の具を垂らしたように。あるいは少しだけ滲ませるように。
「雲があると虚しさを忘れるってことは、雲は……白い雲は白い『汚れ』ってことかな? それか『表情』なの」
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