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夏休み最後の日、部活の帰りにうっかり通り雨に降られて、雨宿りをした。
先輩たちが退屈凌ぎにしりとりを始めて、問答無用で俺も巻き込まれて、『プリン』で負けた。
罰ゲームとしてクラスで一番地味な男に告白しろ、なんて言い始めて、くだらねえと無視していたけれど、先輩たちがやたらと盛り上がって、後輩の俺は結局やらされるハメになった。
だから休み明けの始業式の日、ひとり教室に残っていた石川を捕まえた。
「石川、ちょっといいか?」
「森野くん?」
俺より頭半分低いところにある猫っ毛を揺らしながら、石川が振り返る。
石川周とは、一年の時からのクラスメイトだ。
特に目立つ特徴があるわけでもなく、だからと言ってクラスから浮いているわけでもない。
地味だけどいいやつ、という表現がぴったりなやつだった。
俺とは友人というより知り合いに近かったけれど、去年席が隣だった時に、意外とノリが良い性格だと知った。
だから、石川なら、と。
「好きだ」
「え……」
「付き合ってくれ」
「う……うん、いいよ」
まさか、そんな答えが返ってくるなんて思わなかった。
でも石川は、分かっているんだと思った。
これがしりとりの結果のくだらない罰ゲームだと分かっていて、俺に合わせてくれているんだと思っていた。
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