LOVE is a GAME

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ふと、周の歩みが止まった。 いつのまにか、寮の玄関がすぐ目の前に迫っていた。 周と一緒にいると、時間があっという間に過ぎていく。 この二週間も、風のように吹き抜けていった。 でもそれも、今日で終わる。 「周、ありがとうな」 「なにが?」 「俺に付き合ってくれて」 唐突に聞こえたのか、周が大きく目を見開いた。 でもすぐに、くしゃりと表情を崩して笑った。 「ありがとうって、それは僕の台詞だよ」 視線より僅か下にある周の頭を撫でた。 ふわふわ柔らかい髪が、指に絡みついてくる。 「お前って、ほんとノリいいよな。罰ゲームだって分かってて、ここまでしてくれるなんてさ」 「え……?」 「けど、それも今日で終わりだから。サンキューな」 てっきり嬉しそうに笑うと思っていたのに、周は呆然と俺を見ていた。 桜色の薄い唇が、ゆっくりと動く。 「罰、ゲーム……?」 その震えた声音に、激しい違和感を覚える。 まさか。 いつになくフル回転した頭の中に、ひとつの可能性が浮かんだ。 まさか、そんな。 「周?もしかしてお前……」 「あ、ああ、ああああ、そうだよね。紋世くんもほんとご苦労さま」 おそるおそる紡ぎ出した言葉は、矢継ぎ早に続いた周の言葉に遮られた。 それでも垣間見えた周の瞳がゆらゆらと揺れていて、俺は可能性だったそれが事実だったことを知った。 「紋世くんってば、もう、先輩たちにやられっぱなしじゃダメだよー?」 「周っ」 「そうだ!僕、ご飯の前に宿題終わらせたかったんだよね」 「待っ……」 「じゃあね、紋世くん。また明日!」 「周!」 な、んだ、今の。 周が、泣いた? 嘘、だろ。 だってこれはゲームなんだ。 ただの罰ゲームなんだ。 だから、ありえない。 周が、知らなかったなんて。 ありえない。 周が、傷付いてるなんて――
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