契約の伴侶

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 空はほの暗くなりはじめていたが、なんとかギザの大ピラミッドに到着する。その横には大スフィンクスもあった。そのあまりの大きさと神秘的な光景に黎はしばし呼吸を忘れて魅入る。ほの暗い空でもこれほどまでに美しく神秘的であるならば、太陽の光を受ける昼間のピラミッドはいったいどれほどのものであろうか。明日もう一度ここに来て、今度は昼のピラミッドを見ようと思った時、キラッと足元で何かが光った。不思議に思い黎はしゃがみ込んで砂漠の地を見つめる。砂というよりは乾いた岩のような地に挟まるようにして何かがほんの少しだけ覗いていた。岩で傷つけないようにそっとそれを掴み上げ、眼前に翳す。ネックレスだろうか、千切れたビーズを連ねた紐に飾りが付いている。先程考古学博物館で見たような、黄金を使った細かな模様の飾りは、翼を広げた鷹であろうか。ビーズが連なった紐とつなぐ部分には半円形の黄金があしらわれている。黄金の鷹と腕に着けているブレスレットのダイヤモンドが光を反射し合いキラッと光った。 (これは確か……ペクトラル、でしたか)  ツタンカーメンの墓から出てきた宝物と同じような雰囲気を持っているが、流石にこんな場所に古代の宝物がポロッと落ちているはずはない。きっとお土産用か何かで巧妙に作られたイミテーションだろう。誰かがそれを購入してここで落としてしまったに違いない。紐が千切れているから、気づかぬうちに落としてしまったのだろう。それにしても良くできたイミテーションだ。素人目には本物の黄金にしか見えない。それほど精巧に作られているものならば、イミテーションでもそれなりに高価な物だろう。後でエジプト警察にでも届ければ良いのだろうかと考えた時、ふと子供の影が見えたような気がした。 「――え?」  思わず黎は視線を彷徨わせる。すると確かに小さな子供が独り、砂漠に向かって走っていた。 「あっ! そちらは駄目ですよ! もうすぐ日が暮れますから、砂漠は危険です!」  声をかけるが、子供は聞こえていないようで、どんどんと砂漠に向かって走っていく。仕方なく、黎もペクトラルを持ったまま走って子供を追いかけた。
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