おいしい水

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
必ずと言って良いほど毎日摂取している水、実は日々微妙に味が違うらしいとのことです 日本の技術は大変発達しているので、そのことに気付きにくいのですが、私の友人は微妙な違いを感じることができます もちろん私も、都会と地方の違い 水道水と市販の水との違いぐらいは分かります ただ、その友人は同じ蛇口から出た水の違いさえも感じることができるのです 一応断っておきますが、井戸水の話ではありません 水道水の話です それと、友人もその違いがわかるということを除けば至って普通の人間です ある日のこと、私は友人とレストランに食事に行きました このレストランはチェーン店ですが、友人曰く、ここの水はおいしいとのことで行きつけのお店でした 友人は早速水を飲みます その瞬間えも言われぬような表情を浮かべて言いました 「この水すごく美味しい。こんな美味しいのは初めてだ。お前も飲んでみろよ」 あまりのテンションの高さに、さすがの私も若干ひいてしまいました ドリンクバーを頼んでいたので、友人の誘いは断り、オレンジジュースを飲みました 「残念だなぁ。こんなに美味いのに」 友人は事あるごとに言いました 結局お店を出るまでに、友人は7回も水をおかわりしました その日の夜のことです 友人から連絡が来ました お腹が痛いとのことです そりゃ、あれだけ水をカブのみすればそうなると思った私はとりあえず心配するような絵文字をおくりました その後も何度か連絡はきましたが、次の日のこともあって無視して寝ました 朝、携帯電話を見ると、友人と共通の友人達から、何件も着信が入っていました 病院にいるというメッセージも入っていました 私は、さすがにまずいと思い バイトと授業を休み、友人がいる病院に行きました 友人は少しお腹を壊しただけで、命に別状はありませんでした 薄情なやつだと責められたぐらいでした と、ここで終われば他愛のない話なのですが、問題はこの3日後 友人は自宅で亡くなりました 死因は水の飲みすぎによる内臓破裂とのことでした 最後のメッセージをみると 「最近水が美味しすぎる。ほんとうに美味しい。止まらない」 なぜ水が美味しいのか私には分かりません 水が美味しくなったのか友人の嗜好によるものか分かりません 何か溶け出したというニュースも聞きません 私はただ、友人の冥福を祈るとともに、水をそこまで美味しいと思えない自分の鈍感さに感謝するばかりです
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!