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到は半年前〈この世界〉に流されてきた。海と接するリラの地には特殊な入り江があり、別の世界から様々なものが流れ着く。大半は使い古された道具などのガラクタだが、ごく稀に動物や人間が漂着する。
到も気がつけばその入り江で倒れていたのだった。他にも同じような境遇の人達がおり彼らは流民と呼ばれている。行くあてのない流民は放浪の旅に出る者、そのままリラに留まる者など様々だ。到は元々引っ込み思案な性格の為、見知らぬ国の見知らぬ土地に踏み出す勇気は微塵もなかった。そうしてリラの地に残り、同じく流されてきた動物達の世話をしながら暮らしている。
「ニルヤも不思議な国だよな。イタルとなぜか言葉が通じるし。」
「ぼくは日本語を話しているつもりだけど、テオには別の言葉に聞こえているんだよね。」
流されてきた人間はどういう訳かニルヤの人々と会話は出来るようだった。見知らぬ土地の人々と会話すらできなかったらと想像するとぞっとする。
「おう。あとこの国の文字は読めないんだよな。わからない時は遠慮なく聞いてくれよ。」
「うん。ありがとう。」
「ほら、タピはもう起きな。相棒は外で遊んでるって!」
ルピタスがはしゃぎながら外に飛び出す一方、白黒の体毛がルピタスと反対の配置になっているタピルスは寝藁から頑として動かない。こちらは良夢を餌とする獣で朝が少々苦手なようだ。
「タピを起こすのは、おでこを撫でるんだよね。」
到はかつてテオに教えてもらった方法で、なんとかタピルスを起こす。
姿形の似ている2匹だが、基本的にこの施設に同じ種族の動物が居ることはほとんどない。皆それぞれ別の世界から流されて来たからだ。それは人間にも同じことがいえる。
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