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彼らの寝床掃除が終わり、到達はもそもそ起きてきたタピルスと共に外に出る。薄暗い獣舎から明るい屋外に出て一瞬だけ目が眩む。視界には広大な草原と真っ青な海が広がり、刷毛で掃いたような薄い雲が空の高い位置にある。からりと晴れた空気が爽やかだ。今日も穏やかな天気になるだろう。柵で囲われた放飼場に駆け出す2匹を眺めながら到は大きく伸びをした。
「ふむ。ルピタスもタピルスも元気そうじゃの。」
のんびり伸びをしていた到は、背後から急に声をかけられ飛び上がった。
振り向くと1人の老人がにやりと笑いを浮かべて立っていた。つるつるの禿頭に白くて長い顎ひげ。小柄な到の更に半分くらいの背丈しかない。この老人は神出鬼没でどこか妖怪じみているところがある。
「お、おはようございます。園長。」
「そこは王さまと呼んでほしいが、まぁいいじゃろ。」
「園長の王さま呼びのこだわり謎ですね。」
テオの意見に到も同意する。
「ワシはこのシドニア動植物園を長い時間かけて作った。ここはワシの小さな王国だと思ってるんじゃ。王国を作った者が王さまと呼ばれて何が悪い。」
そう言って笑いながらいつも手にしている杖で先輩の背中をぽかりと叩く。到にはこの杖がどう見ても孫の手にしか見えない。
「いつも気になっているんですが、園長のその杖って…。」
「これか。ほら、ワシは入り江の漂流物を拾い集めるのが趣味で生きがいじゃろ。何年か前に入り江で見つけてついでに拾ったのじゃ。背中を掻く以外にも色々使えるぞ。」
同じ故郷の漂流物に懐かしさを感じる。到が今暮らしているシドニア動植物園は、リラの自然豊かな草原や浜辺の地形をそのまま利用している広大な敷地の保護施設だ。園長が長い年月をかけて入り江に漂着した動物や植物を少しずつ集め、動植物園を作ってしまった。
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