1章

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 動植物園といっても都から遠く離れているし見学者は滅多に来ない。リラに留まることにした流民達も積極的にこの施設で受け入れて生活の面倒を見ている。  動物の世話は重労働だが唐突にこの世界に流されて来た到にとって、彼に拾われたのは幸運だった。 「そうそう、イタルは まだこの子らに1人で餌をあげたことなかったじゃろ。いい機会だからやらせてみたらどうかの?」 「ふえっ。」  物思いに耽っていた到は、急に話を振られて奇妙な返事をしてしまった。 「おー。そういや1人で給餌やったことなかったんだな。大丈夫だよ植物園のメイちゃんに任せておけば。頼りになるよ。」 「えっと、あの。」 「そうそう。まだ幼いがしっかり者じゃ。」 「いや、ぼく植物園はちょっと……。」  そういう問題ではないのだ。ルピタス達の生態はこの園内の動物達の中でも特殊で給餌は週に1回で済む。しかし餌のある植物園まで彼らを連れていかなければならない。それ自体は問題ない。 「お前、もしかしてまだ鳥が怖いの?」 「う。」  ……図星だ。もともと鳥が苦手だった到だが、この園に来た初日に植物園内に放し飼いにされていた大きな鳥に軽く誘拐されそうになった。  それ以来、更に鳥が苦手になり何かと理由をつけて、植物園に行くことをのらりくらりとかわし続けている。 「あの時はなぜかお前のことをメスだと勘違いしたオスの鳥に求愛行動されたんだよな。」  テオは約半年前の出来事を思い出し爆笑している。 「他人ことだと思って…!ぼくは鉤爪で持ち上げられて足が浮いた時、軽く血の気が引いたよ。」  翼を広げたら、自分の身長より大きくなる鳥に突然のしかかられた身にもなって欲しい。せめてオスに間違えられたかった。  とはいえこの園に居る限り、いつまでも逃げまわっている訳にもいかない。持ち運ぶことができない餌なのでこちらが出向くしかない。ルピタス達の為だと小さく深呼吸をして到は覚悟を決めた。 「……わかりましたよ。ぼく1人で行きますよ。」 「もう鳥達の繁殖期は終わったから今回は大丈夫じゃろう。」  いつまでも思い出し笑いをしているテオとニヤついた園長を尻目に、到は首から下げた笛を決まった回数吹く。すると笛の音を聞いたルピタス達がすぐさま駆け寄ってきた。到は手際よく首輪と手綱をつけて2匹を連れ出し植物園へと向かう。
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