00 シンギュラリティ

3/4
前へ
/20ページ
次へ
みんなに好かれる由璃であったが、唯一気になる点をあげるとすれば、相手が誰であったとしても彼女は決して本音では語らない所だろう。 その凛としながら柔らかさもある声の裏に全てを隠して、ほしい時にほしい言葉を与えてくれる。的確で耳触りのいい言葉は、些細な心配事なんて覆い隠してしまう。 由璃が紡ぐ言葉は言霊となって、その人の心の奥深くまで届き根付いていく。 その熱狂に、人間味が薄くて気味が悪いと由璃を遠ざける人もいた。ただ、そういう人よりも圧倒的に由璃を好きな人の方が多かった。だから彼女はいつもみんなの、世界の中心に存在した。 そんな彼女は、ある日突然姿を消した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加