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むかしむかし、とある緑豊かで森と湖に囲まれた、肥沃な土地に恵まれた国がありました。
そこには色んな国に続く道が一つに集う、人と物流に恵まれた都市が沢山ありました。
その中でも最も栄えた都市は、この国を治める王がおわす王都です。
王都の中心にそびえ建つ、白亜と城壁に空色の屋根が映える王城に住み、そこから国を平和で豊かな方向へ導くべく、聡明な頭脳と知恵を持つ家臣たちと緻密な国策を練り上げています。
古く、貴い血筋より生まれたとされる王族ならではの威厳と傲慢さはありますが、民と国を庇護する者として国に属するすべての住人へ深い愛情を注ぐ強い意志を持つ、良き王でもありました。
王様には家族がおりました。
お后様と一人娘である王女様のお二方です。
お后様は隣の国よりお輿入れされたお姫様で、夜の空を明るく照らす月の光のような、儚げな美しさと静かな物腰でありながらも毅然とした意志を持つお方です。
一方、王女様は今年で15歳の誕生日をお迎えになる、少女と大人の女性の境目に差し掛かっておりました。
高貴な方とはいえ子供ならではの純粋さと好奇心が王女様の心の大部分を占めておりましたが、必要ならば高貴な淑女としての心掛けを前面に押し出す強かさも持ち合わせておりました。
子供時代の幼さを残しつつも、年を重ねるごとに小さな蕾だったバラの花びらが一枚ずつ開いていくように、だんだんと華やかさが備わっていく王女様の成人後の行く末について、国の住民はおろか、周囲の国の民も噂しあうようになって行きました。
この物語は王女様の15の誕生日より始まります。
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