遅れてきた天才

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 大前監督が今日の練習メニューを発表した。背が低くポッチャリとした体型のこの人がかつて東西大学が箱根駅伝で3連覇を果たした時のエースランナーだと誰も思うまい。  そんなことより今日の練習のラスト5キロの走りは今の自分の実力をアピールできるチャンスだ。この合宿で調子の良い川口はチーム5番以内のゴールを狙っていた。 「川口、調子どうよ?」  丸っとした大きな目。小柄で日本猿見たいな男の顔が川口の横から現れた。キャプテンの金田だ。 「ラスト5キロ頼むぜ。先頭でゴールして4年生の意地見せてくれよな。」 「お前も4年だろ。途中で集団から離れたら許さないからな。」 「俺は今調子がいいんだ。その心配は必要ない。10番以内にはゴールして見せるよ。」  そう話すと輪になってストレッチしている後輩達の場所へジョギングで向かっていった。この大事な練習の前にあんなに陽気に人と話が出来るのは才能じゃないかと川口は思った。だからこそあいつは特別に実力のある選手ではないがキャプテンとして半年間チームを率いる事が出来たのだ。      
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