遅れてきた天才

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 俺達はチームメイトであるがライバルでもある。金田の言っていた10番以内でゴールすることという事、それはつまり10区間ある箱根駅伝を意識しての発言だ。チームで10番以内でゴールする事が出来れば、お正月に行われる箱根駅伝を選手として走る事ができる可能性がグッと高くなる。もちろん、今は8月なのでまだ半年以上先のことだがここで実力を見せておけば10月にある出雲駅伝、11月にある全日本大学駅伝を走るチャンスも与えられそこで活躍出来れば箱根駅伝の選手の座も掴んだようなものである。  そういう事もあって、合宿終盤のこの時期は普段は仲の良いチームメイト同士もどこかギスギスした感じがあって宿所の空気は重い。そんな中、絶対的な実力がある訳でない金田があれだけ陽気にチームメイトと会話できるのはやはり才能だ。 「川口先輩、ラスト5キロどのくらいで行きそうますか?」 上半身のストレッチをしながら近づいてきた細身で長身の男。長野県にある名門の桜谷西高校出身で昨年の全国高校駅伝1区区間賞。鳴物入りで東西大学に入学してきたいスーパールーキー村森だ。「キロ3分を目標に走ろうと思ってる。ラスト少し上げて14分台で上がれれば上出来だ。」 「そうですね。まだ終盤と言っても7日間残っていますから今日力を出し切ってしまうのは賢くないですね。」  とても一年生の発言とは思えない。練習を点ではなく線では見る事は、長距離選手にとって大事な事だがそれがなかなか難しい。それができなくて練習で無理をしてしまい故障してしまい大会で結果を出せない選手だ。     
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