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「はぁ、こんな日に寝坊をしてしまうなんて・・・。」悩んでいても仕方がない。手際よく牛の世話を行うしかないのだが、眠気のせいかイマイチ気持ちが乗らない。
「モオォ~」ウリコが柵越しに鳴いていた。
「いいよなぁ、おまえは。一日中ぼ~っとして、草をかじって、空想を出していたらいいんだもんな。」ウリコに向かって悪態をつくと「ブモォォ」とウリコは鳴き返した。
「わかってるよ。空想は僕たちにとってかけがえのないものだから、眠かろうが、気が乗らなかろうが、お前たちの世話だけは欠かしちゃいけないんだよな。こうして生活できるのも、お前たちが生み出す空想のおかげなんだから・・・」
恨めしそうな眼をして、ウリコを見つめるミエルは更に続ける。
「でもね・・・。僕は生まれてたったの13年しか生きていないんだ。父さんや兄さんのように声も低くなけりゃ、髭も生えていない。背だってまだまだ伸びていないんだ・・・」
「ブルルル・・・」ウリコはミエルの顔を見ながら、首を縦に振る。
「だろ?ウリコもそう思うだろ?僕はどう見たって、まだまだ子供だろ?」ウリコに向かって一方的に愚痴を話し続ける。13歳になると、この国のしきたりで魔畜の世話を行うようになる。その事を延々と愚痴っているのであった。
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