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黒髪の少女は盗ってきた肉を噛み千切った。
「……まずい」
もともと機嫌はよくなかったが、この飢えを満たすという行為をおっくうに感じたことでますます機嫌が悪くなった。
少女は肉と一緒に持ちかえった人間の女を見る。女の年頃は十代半ばと言ったところだろうか、くすんだ色の金髪は長く、美人とはいえないが、かわいい部類ではある。
「ちっ、姿を見られたとはいえ、殺すことはなかった」
家畜の一頭や二頭がいなくなったのと違い、娘一人が消えたとなっては、村でも騒ぎになるだろう。そうなると少女も村の周りでの活動を押さえなければならなかった。
「……しばらくは目立った行動ができないわね」
今後のことを考えていた少女の視界の端にかすかに動くものが映った。
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