安定の王道

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「九月様!」 運良く、三橋の集めた情報頼りに九月の姿は親衛隊室の近くの廊下ですぐに見つかった。 青味がかった髪に、かけているメガネが元よりの整った利発な顔立ちを映えさせていて、スラリとした体型に合う程良く高めの身長は男子校の中でも存在感があり目立つ。 「一!良かった探してたたんです」 普段はあまり変わらない表情が和げ、いち、と九月だけが使うそれで三ノ宮の名を呼ぶ。 普通ならば嫉妬の嵐だろうが、親衛隊外にはいるだろうが、親衛隊内には三ノ宮を妬む物はいない。 九月自身から信頼されて居ることもあるが、それを勝ち得た三ノ宮親衛隊長としての仕事ぶりを身近で見て居るからこそだ。 「九月様、今日は会議だとお聞きしたのですけど…」 「ええ、その予定だったんですが、綾川が風邪で休みでしたので、つい10分程前に早々と終わりました」 「会長が?」 予想外の答えに思わず目を瞬く。 綾川四季(あやかわしき)、名前の柔らかさとは無縁の性格をした、完全無欠の俺様何様生徒会長様だ。 九月の共として面識はあるが、生徒会長に対して何かある場合も少ないし、もしある場合は生徒会長の親衛隊に伝言を任す。 義理、と言うより単に生徒会長に構う時間があるなら九月様に使う、という徹底ぶり故に。 「鬼の霍乱って奴ですかね、まったく。今の内に様子を見に行こうと思ったのですが、会長の分も済まさねばいけない書類がありますし、塩屋に様子を見てくるように頼みました」 会長が居ない場合、副会長がその代理となる。つまり書類なども副会長が肩代わりすることになるのだ。 「それで、一にも書類整理などを手伝って頂けないかと思いまして」 「勿論、できる限りお手伝いさせて頂きます!」 九月の願いを聞かぬなら親衛隊とは名乗れない。 生徒会の仕事だが、見て良いもの悪いものはきっちり分けられて居るので、その範囲内で多忙な九月の補佐として手伝うことは良くあった、何の苦も無いどころか、それで九月の負担を軽くできるなら三ノ宮としては誉れ高き事である。
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