208人が本棚に入れています
本棚に追加
「……これも九月か?あいつにそんな気が回るとは思わねぇか」
「ああすいません、それは私が勝手にしたことです。お怒りなら私に」
慌てて、もし気に障ったのであればこれは自分の失態だ。
九月は関係ないと伝える。実際に三ノ宮の独断だ。
しかし綾川は先程以上より眉根を寄せた。
九月の指示できたのであって、綾川の為ではないと主張するならばこのような差し入れは不用なはずである。
「良いぜ、これに免じて何か一つ言う事を聞いてやるよ」
それをする理由が何かしらあるだろう。
普段なら無視する所だが今は機嫌が良い、ニヤリと笑いながら言った綾川に今度呆気に取られたのは三ノ宮の方だ。
「は?……あーじゃあその権利は是非九月様に」
「あ??」
「いや、特に無いですしだったら九月様に是非」
だったら何のための見舞い品だ。
少なからず媚びる意味があると考えていた綾川と、何言い出してるんだコイツと言わんばかりの三ノ宮。
次の瞬間、綾川は大声で笑い出した。
突然の笑いに肩を震わせ若干引いている三ノ宮を視界に入れ、綾川は更に笑みを深くする。
「っは!お前良いな、どうだ部屋に入ってくか?」
「いえ各所に誤解を招きそうなので結構です」
「誤解じゃねーなら良いだろうが」
良くない。
尚更に良くないが、つまりそういうお誘いである。
手の早い綾川ではあるが、自身の部屋には入れないと聞いたのだが、どうやら思ったより熱が高いらしいと、三ノ宮は判断した。
最初のコメントを投稿しよう!