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この人でも弱ると人恋しくなるんだな、なんて目で見られているとも知らずに綾川自身は未知の生物を見つけたと心底ご機嫌である。
それを横目に三ノ宮は、はあ、と溜息を吐いた。
「僭越ながら言わせて頂きますと、愛を振りまくなとは申しませんが、お相手は少しばかりお選びになられた方が良いかと」
「おい、人を見境なしみてーに言うなよ」
「いえそうではなくて、綾川会長のように博愛主義な方やその御心を優先する方ではあれば兎も角、一途なあまり方向を間違う方も居ます為……その……最近料理もしないのに、調理器具を研磨する事に目覚めた方もいらっしゃるとか」
つまり遊ぶのは良いがいくら自分に好意がある相手だからと、あちこちに手出しまくってると、刺されるぞ。と。
しかも衝動的でもなく準備万端で。
主に後半で流石の綾川も真顔になった。
嫌がる相手に手を出した記憶はない、最初から遊びだと言い切ってはいるし、たまに縋ってはくるがそういう奴はそれきりだ。位の感覚だったのだ。
最初は難を示して居ても綾川が誘うと、すぐに乗り気になる。
だからこそ今回、三ノ宮相手に面白いと思い、遊び相手になるならば部屋にすら入れても良いと思ったのだが、藪を突いて蛇を出したのか、いやこの場合は知ってよかったのか。
「と言う事で、九月様をはじめ学園の為、何より御為にも何卒ご自愛を」
では、とあっさり去っていくその背を、綾川は今度こそ黙って見送った。
いや、衝撃から立ち直ってなかったとも言う。
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