安定の王道

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親衛隊は表向き部活のような立場なので、無駄に有り余った教室の幾つかを与えられていて、ここはその一室。 主に親衛隊でも上位の立場ある者が利用している部屋だ。 そして先程から、幾度も声を荒げ疲れを見せているのが、三ノ宮一良(さんのみや いちい) ツヤツヤとした質の良い髪を持ち、色は黒。しかし染めた訳でも無いのに、伸びるに伴い毛先にブラウンが混じる不思議なその髪色が特徴で、顔は男らしさよりも少年らしさが残るものの幼さは無くそれなりには整って居る、この生徒会副会長親衛隊の隊長である。 「別に相談してくるのは良いけど、相手が違うだけで内容は大体ローテーションじゃん。俺言うこと変わってないんだけど、もうこれ録音して再生で良いんじゃ……」 「ですねー。いっそ校内放送で公開相談室やりますー?うわ人気でそー!」 三ノ宮の横で、他人事のように言うのが、副隊長の三橋奏(みはしかなで) 男にして置くのが勿体無い位可愛らしい容貌だが、中々毒舌で実は空手有段者と言うギャップの持ち主だ。 「カナちゃんは相変わらず楽しそうだね」 「だって、見放さず優しく諭してあげる一良隊長の優しさ!格好良さ!見てて惚れ惚れするんですもん~」 きゃー!と頬を染める姿に周囲から副隊長かわいいーなんて声が上がった。 親衛隊と言うことは同じ者を慕う仲間でありライバルである。 隊内での揉め事は厳禁ではあるが、小競り合いや牽制し合い、また隊内でも家柄や立場がものを言う事でけして和やかさとはかけ離れるものだが、この九月親衛隊は違う。 何せ親衛隊メンバーは全員の仲間意識が強く、立場の差など持ち出す事も必要もない。 他の親衛隊のように、恋する相手にきゃあきゃあ騒がしく纏わり付いたり取り入ったりしない、相手の迷惑にならぬよう、困った事があれば手を貸し、相談に乗り、危険があれば未然に防ぐ、正しく親衛隊と呼ぶに相応しい働きを主としている。 恋する相手に見返り求めません!ただお力に!まさにそんな感じなので、仲間はライバルでは無く同じ相手を守り慈しむ同志で傷付ける対象でない。 勿論最初こそ他の親衛隊と同じような状態で、全員がそんな穏やかに達観できた訳でも無いが、それを成したのが現隊長の三ノ宮である。
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