安定の王道

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先程までは荒々しい言葉を使っていた三ノ宮も、普段は割と穏やかな方なのだが、生徒会に関わることとなるとついつい言葉を選ぶ余裕に欠けてしまう。 あれでもちゃんと年上には敬語を使い、年下にも抑えめにかなり自制してる方なのだが、温室育ちのチワワ勢にはかなりの威圧感だろう。 最もその温室チワワの筈の三橋は三ノ宮と出会った当初、言い合いになって怯むどころか殴りかかってきた強者であるが。 食堂に到着すると、どこからともなく上がる黄色い声をスルーしながら席に着く。 ただの親衛隊の自分達も中々人気になったもんだ、なんてボヤく三ノ宮に、主に隊長がね、なんて三橋が返していると、先程とは比べ物にならない程の黄色い声が上がる。 慣れてるとはいえ思わず耳を塞ぎたくなるそれに眉根を寄せつつ、二人はさっと周囲を見渡す。 生徒会の一人が食堂へ訪れたらしい、きゃあきゃあ騒ぐ者達と違い、九月親衛隊の者達は声も上げずさっと状況把握に務め、進行方向に居た者は邪魔にならぬように避けたり素早く行動しているのを確認した二人は満足気に頷いた。 「さすがうちの隊員達、天使か」 「鼻が高いね~でも隊長鼻の下伸び過ぎ」 基本隊員達を溺愛している三ノ宮の笑顔に威厳など無い。 その顔は整ってるだけに綺麗なのだが、隊員限定なのであまり外では見せて欲しく無いな、なんて三橋が唇を尖らせる。 「あ、と言うか今日は生徒会メンバーは昼休みに会議が入ってたんじゃ……」 「あれ、確かにそうですね」 親衛隊として九月のスケジュールはきっちり把握している、勿論プライバシーまで侵害するつもりはなく、今は九月当人から提供された情報を元にして居るのだが、その予定では今この時間は会議の筈。 なのにその会議に出席している筈の役員が一人でもこの場に居るのはおかしい。 「トラブルかなにかあったのかもしれないし、行ってくる」 「はーい、サンドイッチあたり後で差し入れますねー」 取るものも取らず、即座に立ち上がった三ノ宮を携帯片手に三橋が見送る。 食堂に来る位だからあったとしても大きなトラブルではないだろうが、何か手伝うことがあるならそれを手伝うのも親衛隊の仕事。 九月の元へ駆けつけるのは隊長であり、九月から絶対の信頼を得て居る三ノ宮、情報収集が三橋それぞれの役目だ。
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