安定の王道

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そんな三ノ宮の九月への想いは周知の事実で、一応綾川親衛隊にも連絡はしたが複雑ではあるが、「三ノ宮隊長なら」と納得してくれた。 「ただし絶対好きにならないでくださいね!三ノ宮隊長じゃ勝てる気しない!」と念押しはされたが。 言われなくても三ノ宮が綾川を好きになる可能性は皆無だ。 実を言うと、生徒会役員の中でも九月のファンは一番数が少ない。 他よりも。と言う意味であり親衛隊なだけあってそれでもかなりの数なのだが、あまり喜怒哀楽を表面に出さないクールさはかっこいいのだが、他の面子の魅力には負けるらしい。 人の好みはそれぞれなので口を出す気は無いが、三ノ宮にとっては九月にしか魅力を感じないのでどうにもピンとこない。 そうまで三ノ宮が九月に入れ込む理由…… そうそれは、バケツをひっくり返したようななんて表現されがちな雨足の強い雨の日。 水分を吸い囲いの役目すら放棄しているダンボール箱の中に置き去りにされた仔犬。 誰もが見て見ぬ振りをしたのだろう、その小さな命を前に立ち止まり雨に濡れるのも構わず抱き上げた姿を一目見たその時から ――と、言うありきたりな話があった訳では無い。 漫画ならこういうパターンがあったりするだろうが、実際のところ三ノ宮の想いのきっかけをを殆どの者が知らない。 何せ本人の口からその類の話が一切出てこないのだ。 周りが聞くと、それを語るには一年じゃ足らないかもしれないし、十文字で足りるかもしれない。 なんてへらへら笑うだけ、そんなちゃんとした理由も明かさぬ動機怪しい人物が隊長をして居て良いのか、と疑問視される声は不思議と無い。 いや、気にならなくはないがそんな些細なことよりも、本人の働き振りに比べたら動機なんて必要ではない。 何より九月親衛隊メンバーには、ああ隊長は想い出を大切になされているのだ!!なんて感動する隊員の方が多い現実である。 そもそも三ノ宮の尽くしっぷりを見て居て疑え、と言う方が無理な話である。
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