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恵美子が耳に当てる受話器の向こうからは、物音がしない。
通話相手である甥の夏樹は静かな場所にいる事が伺えた。
フッと息を吐き、恵美子は切り出した。
「美夕は、捕まえられたの」
「バッチリさ」
夏樹の楽しそうな声が聞こえて来た。
「バッチリだ。おばさんの言う通りの場所に来た」
「じゃあ美夕はそこにいるの。随分と静かだけど」
夏樹は、ククッともケケッとも表現し難い独特な笑い声を立てた。
「美夕ちゃん、俺に会った途端、嬉し過ぎて気絶した」
「まあ」
ホホホと笑う恵美子に夏樹は言う。
「美夕を確実にあなたのものにする為に、子種をたっぷり注いであげなさい。既成事実さえ出来てしまえば義兄さんだって何も文句は言えない筈よ」
夏樹は、電話の向こうで下卑な笑いと共に「言われなくても」と応えていた。
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