忘れていた思い出

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「…千紗、母さん達が待ってる」 「わかってる…二人共ありがとうね?また学校で………、悠人?」 あの時以来会っていなかった拓海に、どう接していいのかわからず一言だけ返す。 今までみたいに無理に明るく振る舞う必要もない。 でも昔の私を知る拓海に、変わってしまった今の私をまるまる出せる訳でもないかった。 歪な関係極まりない。 拓海と距離をとって家に入ろうと、二人に別れを告げて足を進めた時、後ろから腕を掴まれて元にいた場所に引き戻された。 その先には悠人がいて、私の腕をしっかりと掴んでいた。 「千紗、…俺もやっぱり一緒に行く」 「え、でも…」 「そうだよね、悠。やっぱり心配で千紗ちゃん一人でなんて行かせられない!私達も行くよ!」 戸惑う私をよそに、悠人の案に栞までのる。 「なに勝手に言ってるの?これはうちの家の問題なんだけど?」 話を聞いていた拓海がそれを止めに入る。 拓海の中では『家族の問題』で、悠人達は部外者なんだ。 けれど、これは家族の問題では無い。 『私と母の問題』だ。 「悪いけど、俺達はこれから話す話の関係者なんだ。寧ろ、部外者はそっち」 「なっ!なんなんだよ、お前。こないだといい…」 悠人から部外者扱いされた拓海が怒りを露わにする。 だけど悠人が言うことはなに一つ間違ってない。 拓海は完全な部外者で、なにも知らないんだから。
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