54人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
放課後の教室。
皆部活に勤しむ為に次々に教室を出ていく。
ガランとした教室には私ともう一人だけになってしまった。
すぐ隣に座る男の子があまりにも必死にノートかじりついているので、その様子をなんとなく覗く。それに感づいた男の子はノートを見られまいと、私から見えない様に体を使って隠してしまうから、余計に気になる。
「ねぇ、ねぇ何してるのー?」
「な、何でもいいだろ!」
私がからかうように声をかけると、更にガードが固くなってしまって、私は失敗したと心の中で呟いた。
慌てて隠されたノートの中身が気になってしょうが無い私は、隙をついてノートを横取りすることにして策を立てる。
「ふぅ~ん?というか、拓海そろそろ出ないと部活遅刻じゃない?」
「え!!もうそんな時間!?」
「…てや!」
まんまと私の罠にハマった男の子『拓海』からノートを奪い取って眺める。
「あ!おい!」
取り返そうとする拓海には悪いが、もう時すでに遅し。私は小さく肩を揺らし、笑いを最大限に堪えながらノートの中の絵を指差した。
「…っぷ、何これー!うさぎ?犬?拓海昼間言われたこと気にしてたんだ?」
「うるさいな!かーえーせー!」
結局耐えた笑いは限界を超えてしまい、私は盛大に笑ってしまった。
拓海が顔を真っ赤にしながら取り返そうと暴れるのを、笑いながら避ける。
そんな攻防を繰り返した。
私はそんな他愛ない時間がとても楽しかった。楽しんでいた。
拓海との時間が大好きで、大事だった。
ピピピ、ピピピ…。
耳元から頭に響く音。
そんな事もあったな…なんて、機械音が鳴り響く中、ぼんやりと寝ぼけた頭で思う。
部屋にはアラームの音が止まることなく鳴り響くき、その音を聞きながら夢で過去の記憶を見ていたのだと理解した。
私が止めなければ鳴り止まないアラームをいい加減止める為、ゆっくりとした動きで腕を伸ばす。
やっと静かになった部屋の中で、ふと余計な事を考えてしまう。
あの頃はちゃんと、私笑えてた。
笑えてたよね?
……じゃあ今の自分は?
最初のコメントを投稿しよう!