過去と今

2/47
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
放課後の教室。 皆部活に勤しむ為に次々に教室を出ていく。 ガランとした教室には私ともう一人だけになってしまった。 すぐ隣に座る男の子があまりにも必死にノートかじりついているので、その様子をなんとなく覗く。それに感づいた男の子はノートを見られまいと、私から見えない様に体を使って隠してしまうから、余計に気になる。 「ねぇ、ねぇ何してるのー?」 「な、何でもいいだろ!」 私がからかうように声をかけると、更にガードが固くなってしまって、私は失敗したと心の中で呟いた。 慌てて隠されたノートの中身が気になってしょうが無い私は、隙をついてノートを横取りすることにして策を立てる。 「ふぅ~ん?というか、拓海そろそろ出ないと部活遅刻じゃない?」 「え!!もうそんな時間!?」 「…てや!」 まんまと私の罠にハマった男の子『拓海』からノートを奪い取って眺める。 「あ!おい!」 取り返そうとする拓海には悪いが、もう時すでに遅し。私は小さく肩を揺らし、笑いを最大限に堪えながらノートの中の絵を指差した。 「…っぷ、何これー!うさぎ?犬?拓海昼間言われたこと気にしてたんだ?」 「うるさいな!かーえーせー!」 結局耐えた笑いは限界を超えてしまい、私は盛大に笑ってしまった。 拓海が顔を真っ赤にしながら取り返そうと暴れるのを、笑いながら避ける。 そんな攻防を繰り返した。 私はそんな他愛ない時間がとても楽しかった。楽しんでいた。 拓海との時間が大好きで、大事だった。 ピピピ、ピピピ…。 耳元から頭に響く音。 そんな事もあったな…なんて、機械音が鳴り響く中、ぼんやりと寝ぼけた頭で思う。 部屋にはアラームの音が止まることなく鳴り響くき、その音を聞きながら夢で過去の記憶を見ていたのだと理解した。 私が止めなければ鳴り止まないアラームをいい加減止める為、ゆっくりとした動きで腕を伸ばす。 やっと静かになった部屋の中で、ふと余計な事を考えてしまう。 あの頃はちゃんと、私笑えてた。 笑えてたよね? ……じゃあ今の自分は?
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!