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まだ私が中学生二年の時。
あの頃は家に帰っても誰もいなくて、その淋しさを紛らわすためによく夜中に出歩いていた時期があった。
それは生活感のない家に一人でいるのが嫌でしていた事。
父親のいないうちの家庭は、母の稼ぎで何とか成り立っていて、だから忙しいのも仕方ない…そう思えていたのは小学生ぐらいまでだった。
忙しいのは仕方ないと分かっていても、中学生になる頃には月に一度お金だけが置いてあって、ご飯があることも一緒に食べる事も、学校のことにすら関心を持ってくれる事もなくなっていた。
母は仕事場の近くでアパートを借りていて、ほぼそちらで生活していて戻って来なくなってきていて、お金を置いていく時でさえ顔を合わせることは無い。
実質、私は一人ぼっち。
そんな寂しい家にいるのは嫌でたまらなかった。
「私は、いらないのかな…」
冷えきった環境でそんな風に思い始めていた頃。
その日も特に当てもなく、フラフラと夜の道を歩き回っていた。
まだ夏が来る前の梅雨っぽいこの時期。
ベタベタするのが嫌で薄着で出てしまった事を途中で少し後悔しながらも、どんどんと足は先へ進んでいて。
街灯に照らされながら、暗闇を一人で歩き続けた。
時折猫を見つけては足を止めて構ったり、何となく風景を携帯で撮ったり。
ゆるゆると進む時間の中で、ただ暇つぶしを探していた。
「結構遠くまで歩いちゃったなぁ…」
気づけば、いつの間にか全然見知らぬ景色の中に私はいた。
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