序章

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 ───Well! What a beautiful a father and son.(まぁ! なんて綺麗な親子なんでしょう)  エントランスに向かって歩いてくる彼らを見た途端、その存在感が強烈な印象をもってジーナの目に飛び込んできた。  そして、思わず心の中で感嘆してしまったのだ。   父親は、おおよそ日本人らしくない高身長で都会的に洗練された美しい容姿。   息子は、線が細く少年と青年の狭間、成長過程独特の美しさと透明感を醸している。  驚きの表情でエントランスの奥から彼らの様子を窺っていると、それに気付いた父親が明るい笑顔で近付いてきた。 「ハイ! はじめまして。ここの住人の方ですか?」  流暢な英語とフランクな物腰。  間髪入れずに右手を差し出し、初対面の握手を求めてくる仕草もさりげない。 「そうよ、ごきげんいかが? 私は二階に住んでるジーナ。あなた達に会うのを楽しみに待ってたところ。これから宜しくね」  内心の動揺を悟られまいと、自然にその手を握って挨拶を返す。  「ジーナさんのように素敵な女性が出迎えてくれるなんて! 素晴らしいアパートメントに越してきた。うん、俺達はラッキーだ」  軟派な言葉も、彼が言うとまったく下品に聞こえないから不思議だ。
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