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そうかと思うと槇原の背に顔を埋め、くぐもる声でボソボソと言う。
「――良? ……あの、約束。――憶えてる……?」
あれから、ひと月経ったもんな。
勿論、憶えてるぞ陸――忘れる筈がないじゃないか。
「……ああ、憶えてるさ。今からするか?」
「えッ? 本当に……? いいの?」
既に気持ちは決まっている。この一ヶ月間、自分なりに準備をしてきた。
槇原も男だ。陸のためなら『はじめて』を捧げるくらい、些細なことなのだ。
「何度も言わせるな!」
「ヨシッ! ああ――でもどうしよう、ドキドキしてきた……」
素直な感情を豊かに表し、耳や頬を真っ赤に染めて喜んでいる陸の姿は、本当に可愛いし感動的だ。こんな姿を目の当たりにした途端、槇原は今まで自分がこだわり続けてきた小さなプライドを恥じた。
「そうと決まれば、夕飯前にするぞ」
「――やった! 有難う、良……」
「いいから、早く来いッ!」
お互いTシャツに半パンという、ラフな格好をしている。
ベッドルームに入ると、それぞれが数秒でそれらを脱ぎ捨てベッドに潜り込んだ――
『僕が、気持ちよくさせてあげたいんだ』と宣言した陸に、今日は全てを任せることにした。
「はぁ…、んんッ……」
「どうした?」
「…うん……。良の、が、その――……。なかなか……僕が下手くそ、だから――」
ぎこちないながらも一生懸命、その可愛らしい口で槇原自身を愛撫してくれていた。既に陸自身は、そのシチュエーションと口内の刺激だけで腹に付くほどの臨戦状態になっている。
しかし――。槇原のそれは、『はじめて』への緊張からか、いつになく反応が鈍かった。
「……陸、俺のことは気にするな。後ろはある程度ほぐしてあるぞ。陸はやってくれないのか?」
わざと砕けた口調で、陸をけしかける。
すると、陸はハッとした様子で「…あっ……えっと。ジェル、は……」などとモゴモゴ言いながらベッド周りを探り始めた。
「そこにあるぞ?」
そう言って枕元脇のサイドテーブルを指で示した槇原は、羞恥心を無理やり押し込めて、陸がリードしやすいと思われる体勢を自ら作り自分の身体を差し出す。
が。しかし――
結局は、槇原がリードする形になってしまった。
「……陸。それ、パンパンだから一旦出したほうがいいな」
「アアッ――! 良ッ……イクッ……!」
「……よし。上手くいけたな、お利口さんだ」
「……。良、上手すぎるし……」
「ハハッ。そうか? そりゃあ光栄だ――」
焦る陸の心身をリラックスさせるため、槇原は口で陸の怒張を愛撫し、一旦そこに集まった精を吐き出させた。
ハアハアと肩で息を吐きながらもすっかり落ち着きを取り戻した陸は、元来の器用さと探求心を取り戻し、槇原の身体のあちらこちらをまさぐり始めた。
「――う、あッ……」
「ここ? ここでしょ? 良? ここ、気持ちいいでしょ?」
「――うわっ! 陸。りく……。ちょっと待、て……」
「…大丈夫。心配しないで、もう3本目の指が挿ったし、感じる場所もわかった。こんな風になっていたんだね……あったかい――」
興奮からか、声が上ずる陸に槙原は乞う。
「……ッ! 陸、もう挿れろ!」
「……うん。ラバーするから、少し、待って――」
「いいから! いいから。そのままでいい……陸、そのまま来い!」
陸は――自分自身と、陸を受け入れてくれる槙原の後孔……、その両方にたっぷりとジェルを塗り込み、ゆっくりと槇原の中に挿ってきた。
できるだけ……。
できるだけ優しく陸を包み込んでやりたいと考えていた槙原は、その直前に静かに息を吐き、下肢全体からゆっくりと力を抜く。
そして、陸自身をゆっくりと……身の内で包み込み、そっと抱きしめた――
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