終章

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「ううッ……」  眉間に皺を寄せ、挿入の違和感を遣り過ごす槙原の表情を窺いながら、陸が途切れ途切れの言葉で気遣いをみせる。 「……くる、し、い? ……あっ。りょ、う……、僕――」  陸こそ、苦しさと愉悦を織り交ぜ必死に何かに耐えているような表情だ。 「ん?……どうした? ……俺の事は、気にするな……! あと少しだ。最後まで、挿れちまえ……」  槙原からのゴーサインに、陸は意を決した様子でグイッと腰を進める。 「――ああぁぁっ、良…! 凄く、気持ち、イイ……」 「――ん。そう、か……。よかっ、た、な……り、く」  初めてとは思えない腰の動きで、陸は何度も槇原の感じるポイントを的確に突いてくる。    恍惚としながらも冷静さを失わずに槇原への気遣いを忘れない陸は、激しい衝撃に委縮する槇原の性器を手で擦り、『良、一緒に……』と槇原の耳元で囁き、本能的な動きで緩急をつけながら槇原の中を攪拌する。 「良、りょう、りょ―――」 「――りく…」 「あ、あああぁ――」  ハアハアと息を上げ、陸が果てる。  感極まった落涙と、発汗――。  ポタポタと槙原の素肌を叩くその雫の正体が、どちらなのか? 混ざり合っているのか。    その後、追い駆けるように槙原も陸の手の中で果てていた。  どさっと、陸の優しい重みが槙原に覆い被さる――その愛おしい重みを、槙原は逞しい胸板でしっかりと受け止め後戯を仕掛ける。  リップ音を立てながら顔中に感謝のキスを贈りつけ、無言で陸を労う――気持ち良かったぞ(・・・・・・・・)、と……。  暫らくすると、陸が槙原の中からそっと抜け出した。  同時に、陸から放たれたもの(精液)がトロリと槙原から流れ出る――なんとも表現の難しい感覚に囚われた槙原だが、それが決して不快なものではないことは確かだった。    そんなささやかな現象も含め、槙原は陸との全行為を感謝と共に享受した。  いつも槙原が陸に施すそれ(・・)を思い出したのだろう。  「中を掻き出させて欲しい」と言う陸の申し出をやんわりと断った槇原は、先にシャワーを浴びて身を清めた。  ベッドルームに戻ると、既にベッドメイクは済んでいた。  だるい腰を清潔なシーツに横たえると、爽やかな香りがふわりと槙原を包み込む。  数分の後、シャワーを終えた陸が戻ってきた。 「良さん、有難う」 「ああ。チェリー卒業の気分はどうだ?」 「うん――。感動した。良の中、もの凄く温かくて気持ちがよくて……」 「……そうか。よかったな」 「辛いでしょう? 少し休んで。僕、夕飯の準備してくるから」  程なくして――  トントン、ジュージュー、シャッシャッ……  心地好い疲労感に抗えなかった槙原は、知らず知らずのうちに微睡みの中へ身を投じていた――陸が料理する、ぬくもり溢れる気配を子守歌にしながら。
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