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序章
アメリカ西海岸有数の世界都市ワシントン州シアトルは、比較的過ごしすい地域として有名だ。
しかし、実際には秋から春にかけた長い期間が雨季である。雨季といっても強い雨が集中して降るのではなく、ほぼ毎日が小雨や曇天で、極端に日照時間が少なくなるといった具合なのだ。
4月が始まったばかりの今日は、珍しく晴天だった。
月に数日しか拝めない太陽が燦々と降り注ぐ日曜の朝、気持ちまで晴れ晴れする。
休日にもかかわらず早くから起き出したジーナも、家中のあらゆる窓を全開にしていた。
久し振りの晴天がもたらしてくれる恩恵を最大限に享受しようと、家中に爽やかな風を通してやりながら、シーツやバスマットなど大物の洗濯や、あらゆる箇所の掃除に大忙しだ。
一方、新しい住人が今日やって来ると聞いているので、ソワソワしながら彼らの到着を心待ちにしていた――
日本人の父子だと聞いている。
予め入手している情報はここまで。
いまどきプライバシーの守秘は常識だし、ジーナだってそんなことは端から心得ている。
知りたいことは正攻法で尋ねるのが一番だということも、長い人生経験の中で充分に学んでいる。
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