エキゾキャットについて

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「黒猫が横切ると縁起が悪い、とは元々は海外の風習が日本に根付いて広く知られるようになったとゆうことです。日本において、黒猫は幸福を呼ぶ招き猫のような扱いで、縁起の良いものでした。しかし欧州ではその風貌が不吉なものととらえられ、その風習が日本に渡り言い伝えられ、現在の黒猫像が出来上がりました・・・。」 国語の授業で習った、不吉な黒猫が、目の前にいる。 新宿、花園神社。水曜日の短縮授業の日、学校帰りに参拝して帰るのが日課だった。でも今日は、参道の真ん中に全身真っ黒な女がいて、なんとなく通りづらい。顔つきからして外国人なのに低い鼻。遠くを見つめて佇んでる。でも、まあ、日課だしな。彼女の横を通り過ぎることにした。彼女まで10メートル、5メートル、3メートル・・・。そんなに長くないはずの参道が長く、長く感じる。11月なのに汗がすごい。頭の中で蝉が鳴いている。寒空の下泣き叫ぶ蝉。うるさい。1メートル、50㎝。そして、すれ違う。 僕は黙って、「あなたのことなんて見えてませんよ」って顔してすれ違った。なんだ、普通じゃん。何か言われたり、手首を捕まれたり、何もなかった。ほっとして、僕は参拝を済ませる。蝉ももう、鳴いていない。じいちゃんが早くよくなりますように。じいちゃんは最近、腰を痛めてつらそうだ。しっかり願って、帰ろうと振り返る。 笑顔。さっきの女がこちらを向いて笑っている。なんて醜いんだろう。「欧州ではその風貌が不吉なものととらえられ・・・。」先生の声がリフレインする。なんで横切ってしまったんだ。なんで彼女の横を。後悔が沸いてきて、蝉がまた鳴き出す。9月に死んだはずの、小さな生き物たちが合唱。合掌。 僕は目を瞑って、全速力で彼女の脇を走り抜けた。彼女は狂った笑い声を上げて、英語で何か怒鳴っている。時折聞こえる、小学3年生の僕でもわかる単語。「grandfather」 その日の夜中、じいちゃんはベッドから落ちて腰を打ち、寝たきりになってしまいました。僕の頭の中では、あの日の蝉がずっと泣いてて、うるさいんだあ。
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