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ハッと私は我に返った。
家の中は静まり返り、時計の秒針の音だけが響いた。
外の街灯は光っては消えてを繰り返している。遠くでOLのヒールの音が微かに聞こえたと思ったら、すぐに通り去った。
しばらくして、また時計の秒針の音だけになった。
両親はいない。
私は目の前のご馳走をじっと見つめ、心の中でいよいよ決心がつき、深呼吸をしてナイフとフォークを手に取った。
肉はとてつもなく美味だった。
硬くなっている所も少なく、スっとナイフが肉に入り、脂は少ないが流れる血の鉄の味が堪らなく舌を刺激する。
なんて贅沢なんだろう。
眼球はデザートに取っておこう。
皮を剥いだ太腿と頬肉を交互に食べる。それぞれ食感の違う味わいで口の中は幸せでいっぱいになった。
私は天国と地獄どちらに行くのだろうか。
そんなことを思いながら最後の晩餐を楽しんだ。
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