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ため息をついて手元に目を戻した時、俺はあることに気づく。
久しぶりに開いた俺のSNSの足跡欄に、北畠さんの名前が載っていた。
(な、なんで……)
やりとりは去年の2月で終わっているのに、あの人は2日前にも俺のページを覗いている。
余計な期待が胸にもたげる。
誘われるようにその名前をタップして、彼の近況をチェックした。
読んだ本の話、スポーツの話。そして相変わらずストイックに仕事をしている。
出張で行った土地の風景写真が何枚か。
恋人はいなさそう。
俺は何をチェックしているのか。
それから、俺が前に薦めた本の感想をいくつか見つける。
期待するだろう、やめてくれ。
(っていうか、ここ見たってバレたら気まずいよな? 俺の足跡消しておこう)
そう思って足跡の消去ボタンを押そうとした時。
ちょうどそのSNS経由でメッセージが入る。
『会いたい。このあと時間ない? 北畠』
心臓が止まるかと思った。
ドキドキしながら顔を上げると、3列向こうの席でスマホを振っている彼と目が合う。
営業成績1位の笑顔で、俺なんか落としてどうするのか。
でも今回もあの人に誘われてホイホイついていってしまうんだろうなあと、未来が読めている俺だった。
<終わり>
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