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一学期期末考査を目前に控えた土曜日、ツバサは溝口の家に勉強しに来ていた。二人の前の机には真っ白な問題集が広げられ、すぐ脇には答えが置かれている。
ツバサはリンクを選択し、溝口はマリオを選ぶ。息抜きと称して始まったスマブラは、既に三回戦目へと突入していた。カウントダウンが始まる。
「実行委員、まぢで助かった」
二人のキャラクターが平坦なフィールドに降り立つ。リンクとマリオが着かず離れずの距離を維持して、的確にダメージを稼いでいく。
「あんなことに時間かけたくないだろ?」
ツバサは画面に集中しながら「まぁな」と答えた。リンクが小刻みに跳びながら、崖外まで追い込んでいく。強めの一撃を叩き込まれ、マリオがフィールドから飛び出した。
「ところでさ。どうなったの?」
「なんの話?」
「お前と渡会」
しぶとく耐えているマリオを追って、リンクが飛び出す。追い打ちを決めようとした瞬間、反撃を喰らい、強く下方向に飛ばされた。
「テスト終わったら遊びに行くことになった」
「え」
二機目のリンクがフィールドに降り立つ。引き気味に応戦しながら、反撃の隙をうかがう。
「どうした?」
「いんや、別にぃ?」
後ろにブーメランを投げると、滑り込んできたマリオを回避する。背後に回り込んだ後、素早く掴みあげた。
「面白そうだから、黙っとく」
「は? 言えよ」
掴んだ状態で二、三発殴りつける。振りほどかれるより早く投げ飛ばし、戻ってきたブーメランに当てた。
「まぁ、それはそうとして。次の考査さぁ。赤点だったら追試、夏休みにやるらしいぞ」
ブーメランに当たり、マリオが一瞬怯む。その隙を突いて、二段階のスマッシュ攻撃を命中させた。
「なら遊んでる場合じゃねぇな」
ツバサが言った。勢いよくフィールドの外に飛んでいくが、まだマリオは生きている。マリオは追撃に跳んだリンクを、下方向に強く殴りつけた。
「そうだな。遊んでる場合じゃねぇな」
「くっそ! やられた!」
思わずコントローラを投げ出す。満面の笑みを浮かべる溝口が非常に腹立たしい。殴り飛ばしてやりたい衝動を押さえつけ、ようやく問題集と向き合った。
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