6月

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 期末考査の最終日、クラス委員の二人は大半の生徒が帰宅した教室に残り、学祭実行委員を手伝っていた。先日上がった案を精査し、次回の話し合いで確定させる。ガンプラ展示とか、校庭が使えないために校内を走り回ることになる逃走中などが、除外されていった。 「TRPGも外して」  清水がスマホを見ながら言った。ツバサがバツ印を付ける。そうして現実的な案だけが残され、半分ほどにまで数を減らしていた。 「暴露大会も無しでいい思う」  詩織がメモを見ながら言った。ツバサは素早くバツ印を付けようとする。そのまま済ませてしまいたかったが、先に溝口が口を挟んだ。 「あってもいいんでねぇの?」 「よくぞ言った溝口!」 「おうよ!」  学祭実行委員同士、気が合うのかもしれない。ツバサと詩織が同時にため息をついた。  清水がメモをノートに挟み、カバンに戻す。そしていつでも連絡できるようにと、学祭実行委員会と銘打ったライングループを作成した。 「わたし、学祭実行委員じゃないのに」  詩織が笑って、アイコンを変えた。シンデレラ城をバックに四人が写っている。修学旅行の時、デジカメで撮影してもらった写真だった。 「学祭関係ないけどいいじゃん」 「ねー」  溝口がスマホをしまうと、大きく伸びをした。  間もなく午後四時になろうとしている。普通の日なら早い時間だ。ただ、今日は期末考査により、午前中で終わっている。そのことを考えると、かなり遅い時間だった。 「明日、進路希望調査書を提出する日だったよね」 「おぉっと、明日だったっけ」  四人は帰り支度を済ませて教室を後にする。梅雨の真っただ中でありながら、今日はよく晴れていた。 「はぁ、俺専門にでも行こうかな」  溝口が軽いカバンを振り回して、ため息をついて言った。 「私たちの学校じゃ、専門ダメなんだってさ」 「うちはスポーツ推薦狙いで――」 「それもこの学校じゃ認められないらしい」  窓から差し込む光が、渡り廊下に立ち込める砂埃によって、斜めに差し込んでいるのが見える。 「俺は実家を継ぐから進学しないのも……」 「それこそ許されないだろ」  ですよね、とツバサは笑う。これだから自称進学校は堪らない。まだまだ続くテストの山が目に浮かび、ツバサは深くため息をついた。
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