7月

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 警報が鳴り響き、遊園地のゲートが開く。ゲート先の細い通路から、大量のゾンビどもが波のように押し寄せてくる。 『追試やだよぉ!』  イヤホン越しに溝口の声が聞こえる。ツバサは事前に仕込んでおいたポリタンクを撃ち抜く。中の燃料に火が付き、盛大に拡散する。炎は走り寄るゾンビの進路をものの見事に塞いだ。 「ほんとテストばっかだよな」 『な』  高台に上り、前後左右から迫るゾンビを捌いていく。集団の中に、丸々と太った男のゾンビを見つける。ツバサがその腹を撃ち抜くと、周囲のゾンビを巻き込んで盛大に爆発した。 『学生の時が一番遊べるって言うけどさぁ。俺ら、地味に忙しくね?』  炎が収まり、ゾンビの数が減る。溝口は銃から防火斧に持ち替え切り込んでいく。背後から追ってくるゾンビを処理すると、退路に火炎瓶を投げつけた。 「まぁ、言っても学生だし――。やっべぇ!」  炎の奥から、長い舌がツバサを捕まえる。すさまじい力で、みるみる炎へと引きずり込まれていく。彼のピンチに気づいた溝口が、長い舌を切り落とした。 「すまん、助かった」 『おう、感謝しろ?』  二人は弾丸の大半を使い果たし、満身創痍になりながらセーフハウスに飛び込む。そこで救急キットと弾丸を補充し、遊園地の奥へと向かった。  一握りのゾンビを倒し、野外ライブ会場に出る。ツバサが証明を落とし、溝口がスポットライトを点灯させた。 「思った事言っていい?」  ロックな音楽が打ち上げ花火と共に鳴り響く。大量のゾンビが押し寄せ、生き残るべくステージの上を走り回った。 「ぶっちゃけさ、清水の事どう思ってんの?」 『はぁ? なんで?』 「最近、仲よさそうだなぁって思って」  上半身が筋肉で肥大化したゾンビが、雄たけびを上げながら迫って来ている。特殊なゾンビは巨大な腕を振るい、溝口を殴り飛ばした。ツバサの近くに落下する。彼は地面へと崩れ落ちると、ハンドガンで応戦しだした。 『なんとも思ってねぇよ』  救出に向かうツバサの前に、特殊なゾンビが立ちはだかる。通常のゾンビが周囲を囲む。生存は困難かと諦めかけたとき、小型のヘリコプターが会場に飛び込んできた。 『俺はいいから、はよ行け?』 「え?」  溝口に大量のゾンビが群がっている。ツバサが躊躇っていると、溝口が笑いながら言った。 『クリアにならんから、はよ行けやぁ!』
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