7月

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「ありがとうございました!」  学祭実行委員会となった四人が頭を下げる。学校横の企業から、大量の段ボールを譲り受ける。人当たりの良いおじさんは、四人のために、わざわざ紐で縛ってくれた。溝口が押す自転車に、段ボールを乗せる。ツバサは滑り落ちぬように、後ろで支える。元々、家電の梱包に使われていたとかで傷一つない。サイズも、数も申し分なく、充分に事足りるであろう量だった。 「どうしよう。運ぶのはいいとして、置いておく場所がない気がする」  昇降口にできた、段ボールの小山を見ながら清水が言った。ツバサ達のクラスはお化け屋敷で確定した。仕掛けから壁まで作成する都合上、段ボールが多いに越したことはなった。 「持とうか?」 「大丈夫……」  四人は複数回に分割して運び入れる。ただ段ボールを運ぶだけでも、その量とサイズに、すれ違う生徒の目を引いた。教室まで来ると、残っていたクラスメイト達が場所を作ってくれた。教室は多少窮屈にはなったものの、問題なく納まった。  ツバサは購入したジュースを詩織に渡す。嬉しい重労働にみな息切れしていたが、特に詩織は机に伏せるほどだった。 「ありがとう」 「ついでにお前らにも」  清水と溝口にも一本ずつ渡す。二人は礼を言い蓋を開ける。ツバサは自分のジュースを開けると、一気に半分ほど飲み干した。ようやく落ち着いた清水が口を開く。 「これだけあれば充分だろぉ」 「余りそうだよね」  詩織が笑って答える。 「どうした」  先ほどから、やけに溝口の口数が少ない。ツバサが彼に問いかけると、ニヤニヤと笑って答えた。 「いやぁ。優しいツバサ様、さすがです!」 「やめろって!」  ツバサは顔を逸らし、ジュースを口に含む。そんなやり取りを見た清水が悪乗りする。 「ツバサ様! あざます!」 「ツバサ様!」  溝口が二人に増えた気がして、ツバサは教室を飛び出す。そんな後姿を見て三人は笑った。
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