7月

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 日曜日、名古屋駅コンコースにある金時計そばにいた。約束の時刻より少し早い。取りあえずツバサは、詩織にラインを送る。彼女は到着するまでまだ少しかかると言うので、そのまま映画館情報を検索した。  何して遊ぼうかと話していた時、詩織はどうしても見たい映画があると答えた。彼女曰く少し古い映画なのだが、特別に再上映する予定らしい。偶然テレビで見たらしく、どうしても映画館で見たいと思ったのだそうだ。それほど面白いのならと、映画を見に行くことになったのだが、タイトルだけは上手く誤魔化されていた。  後ろから肩を叩かれる。振り返ると、溝口が立っていた。 「え、なんでいるの?」 「なんでって、そらぁ遊びに」  溝口は笑って答える。「誰と」と聞こうとした時、今度は清水が手を振りながら現れた。 「早いね、二人とも」 「おう」 「残るはしおりんだけかぁ」  困惑するツバサをよそに、二人は話しだす。ツバサは強引に彼らの会話に割って入る。 「なぁ、どういうことなの? 全然状況がわからんのだけど」 「どういうことって?」  清水が聞き返す。眉をひそめる二人を見て、溝口が笑い出した。 「お前、渡会と二人だけだと思ってただろ?」 「え、違ったの?」  今度は清水が笑い出す。唯一状況が飲み込めないツバサは、二人の顔を交互に眺める。 「本当は、うちらも誘われてたの。で、多分しおりんは、そのことをツバサに言ってない」 「ふあぁ!? 俺めっちゃ恥ずかしいんだけどぉ!」  ようやく状況を理解したツバサが手で顔を隠す。彼の様子を見て、清水と溝口は腹を抱えた。  平静を取り戻した頃、詩織が姿を現す。ただならぬ雰囲気を察知し、おずおずと尋ねた。 「ど、どうしたの?」  ツバサは顔を背ける。ツバサの代わりに清水が笑って答える。 「ツバサさぁ。うちと溝口が来る事知らなかったんだって。ちゃんと伝えないからぁ」 「え、それって『アイツには俺が言うから』って溝口君が……」 「おめぇかよぉ!」  溝口は笑いながらツバサから距離を置く。そして一言だけ「トイレ」と言うと、足早に離れて行った。
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