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さすがお説教はうまいんだ。
「僕が本当に、そんな条件を飲むと思ったの?」
僕は言いくるめられた被害者のふりを。
本当はもう痛いくらいに身体が疼いていたけれど。
「頼むよ。これ以上乱暴な真似はしたくないし、君の尊厳を傷つけるつもりもない」
ルカは騙されなかった。
彼の眼は真実を見抜いている。
ただ指摘しないだけで。
「十分我慢した。君は偉いよ――だけど人はそう簡単に変われないんだ」
「その格好で言うと真実味があるね」
聖職者のローブは悪意の隠れ蓑にもなるらしい。
「けど実際問題――こんなで僕を抱けるかな」
着々と罠にはめられていることも知らないで。
美しい眠り姫はまだ夢の世界から戻ってはこない。
「大丈夫だ。もう目が覚める頃――それにほら」
ルカはその気にさせるよう僕の手を
薫の分身へと導き握らせる。
「彼も僕らと同じ――弱い人間だということを忘れないで」
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