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僕は出来れば誰の目にも
今のルカを触れさせたくはなかった。
僕の悪意がまんま取り憑いた今のルカ。
見たくなくて僕は攻撃した。
彼が立ち直れなくなるほど深く傷つけ
できるだけ神から遠ざけてやろうと
僕はルカを穢し濁った沼底に突き落として堕落させてやったのだ。
それなのに――。
「なんで薫お兄様……ルカのことなんて気にするの?今更放っておけばいいじゃない。お嫌いだったでしょ?彼のこと……」
それを見られることはすなわち
僕の恥部を曝け出すことに他ならない。
「いまさら何言ってやがる。ほら、降りるぞ」
薫に腕を引かれるようにしながら
僕は渋々リムジンの後部座席から降りたった。
大学周辺ということもあり
夜になるとあたりはひどく閑散としている。
うすら寒い――身震いした。
自分の残していった悪意の塊が
すぐ近くで僕らを見張っているように感じた。
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