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キャンドルの厳かな灯り。
聖水の満ちた瓶。
マリア像のベールは純白だし
聖女に捧げる百合もまた純白だ。
しかしここは聖域だと示す数々の印を
曇らせる何か――。
そうだ。
ここには血の匂いが漂っている。
薫は敏感に感じ取っているはずだ。
だけど歩みを止めず祭壇の前まで歩いて行く。
僕はその後を影のようについて行った。
鳶色の髪はキャンドルに照らされるととびきり綺麗だ。
それだけじゃない。
罪を知りながらなお子供のように無垢な瞳。
繊細な鼻梁の影。
うっすら桜色の差す頬。
それこそバロック絵画に描かれた天使みたいに。
薫お兄様は綺麗だ。
「あそこにルカがいるのか?」
祭壇の奥にある小さな扉を顎先でさし示し
薫はこちらを振り向いた。
「ええ」
「ならどうして出てこない?」
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