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「さあ。どういう了見でしょう」
僕らがやってきたことには当に気付いているはずだ。
でも物音ひとつしない。
「ルカ」
僕は小部屋の扉を小さくノックした。
キャンドルが揺れ僕らの長い影も物々しく揺れる。
痺れを切らした薫がドアノブに手をかけた。
何の仕掛けもない。
木の扉は軽く内側に向かって開いた。
地下に設えた小部屋。
石壁が剥き出しの6畳くらいの空間だ。
窓もない。
当然日が差すこともない。
扉を閉じてしまえばそこにあるのは真の暗闇だけになる。
独房のようだと思う。
いやもっと言えばヴァンパイアの棺のような部屋。
僕らは暗闇に目を慣らそうと凝視する。
でもそんなことぐらいじゃ埒が明かない闇だ。
それで薫が一番手近な燭台に手を伸ばした。
その小さな灯りを手に
僕らは一歩ずつ闇の中へ足を踏み入れた。
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