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「薫お兄様に何したんだ……?」
もう一度聞く。
薫は放心したようにピクリともしない。
ルカがそんな薫を片手に抱えて
すっくりと立ち上がった時。
仕込まれていた血糊の入った袋が
ローブの裾からするりと滑り落ちた。
「一体なんの真似……」
「あなたの血を飲んだせいだ」
「え……?」
ルカは嬉々として笑みを浮かべたまま言い放つ。
「限度を知らない、悪戯っ子のあなたの血を飲んだのせいでこんなこと――」
ルカが片手に握っていた黒い物体を掲げる。
チリチリと稲光のような電流を放つそれが
スタンガンであることに気づいてからすぐさま。
僕は手元の燭台の灯りを吹き消した。
暗闇に紛れて姿を眩ます為だ。
「ああっ……!」
だけど一瞬遅かった。
スタンガンは的確に僕の身体をとらえ
暗闇の中、完全に僕の動きを封じた。
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