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朦朧とする意識の中。
身体を引きずられ階段を降ろされる感覚が
脳髄に響くように伝わってくる。
同時に夢うつつで思う。
ここにはもっと地下深く掘られた隠し部屋があるんだと。
それはまるでルカが心に抱えた闇のような部屋。
いや――むしろは誰にでもある心の深層か。
とにかく僕はその中核部へと向かって
引きずりおろされている気がしていた。
こんな時に限って――。
いつもは陰気なルカは鼻歌まじり。
シリアスな状況には不釣り合いの
軽快なメロディーがひどく耳障りだ。
煮て食うつもりか。
焼いて食うつもりか知らないけれど――。
そういえば薫はどうしたろう?
聞くまでもなく僕は次兄の居所を知る。
「ウゥ……」
痺れきった指の先に
唸り声を上げる滑らかな素肌が触れたからだ。
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