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「考えてもごらんよ。僕がどんな了見で君の所へ来たのかさ」
「少しでもいい人間になりたい、だったね」
「僕から悪意を吸い出して昇華すると君は言った」
ルカは苦し気に
手で顔の半分を覆って首を振る。
「ああ。たしかにそうだ。悪意を昇華してやる代わりに僕はほんの少し血をいただく。大概の人間なら一度か二度、それですむ。誰も傷つかないし僕もそれ以上は望まなかった。ただ君の血は――」
「淫らで欲深いコウモリの血?」
「己の悪癖を人の所為にしたことはない。ただ……抑え込めなくなった。君の血を飲んでから僕は何度となくこの場面を夢に見た」
この場面――。
裸の僕と薫を見下ろすルカ。
「欲しいのは薫の血か?」
僕はもう共犯者のようなていで
声を潜めてルカに尋ねる。
「それもある……」
ルカは否定しなかった。
「でもそれだけじゃない」
「それだけじゃないって?」
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