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僕は知ってる。
人は自分に都合のいい言葉を真っ先に受け入れる。
「考えてもごらん?彼は一つ屋根の下で君と暮らしてるんだ」
「何が言いたいの?」
「彼だって一度や二度――君に欲望を抱いたことがあるはずさ」
思い出す。
いつも僕がふざけ半分そそのかしてはいたが。
確かに僕と薫は何度か互いに本気で意識したことはある。
一線を越えなかったのは
僕の周りに常に相手がいすぎたことと
警戒心の強い猫みたいな薫の性格ゆえだろう。
「裸にしてしまえば人間なんて誰もそれほど変わらないのかもしれない。君たちのように美しいか否かは別として――」
ルカの視線はたっぷりと性的な興奮を孕んではいたけれど。
彼は決してローブを脱ごうとはしなかった。
真に昂るのは血を見た時だけなのかもしれない。
「ごらんよ和樹、君が握っているから、彼感じてるみたいだ」
ルカが背後から僕に手を重ね低く囁く。
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