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分かってるよ。
化け物は僕だ。
本当に醜いのも彼じゃない僕の方だ。
「薫お兄様――そんなの嘘ですよ。僕はルカがあそこにいると小耳にはさんだからちょっと様子を見に行っただけ」
だけどみすみす自分から
己を貶めるような告白はしない。
「あの男そんな作り話して、きっとあなたを呼び出す気なんだ」
あなたの血がまた欲しくなってさ――。
僕は意地悪く囁くと
服の上からそっと薫の手首をなぞってやる。
「ルカは変わり果ててしまっていたよ。もちろん悪い様に」
薫は不愉快そうに眉をしかめていたが
身体は硬直したように一歩も動けないでいた。
「だから間違えても一人でルカに会いに行ったりしちゃダメですよ」
これで大人しく引き下がると思った。
だけど見当違いだったな。
「誰が一人で行くと言った?」
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