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その日に限って夕飯時。
テーブルには天宮家の男衆が勢ぞろいしていた。
「珍しいですね。今日に限って征司お兄様も九条さんも。近頃じゃどちらか片方でも食事の席にいらっしゃればいい方なのに」
今日に限ってに力を入れて
椅子を引きながら僕はチラリと薫を見やる。
薫は涼しい顔して皿のムニエルにナイフを入れていた。
「君が落ち着いて学業に精を出していると聞いてね。安心してるんだ、僕も征司くんも――ねえ」
いつになく優しい声音で義兄に話を振られた王様は
僕を横目に見て『ああ』とか『まあ』とか気のない返事を返す。
「2人とも、この後は仕事に戻るのか?」
食卓で珍しく薫が口を開いた。
返事によってはこの後の予定に支障をきたすからだ。
僕は無言のまま最近中川が頻繁に出してくる
豆のサラダをフォークで突いていた。
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