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(鳩じゃあるしこんなものばっかり……)
思いながらもにこやかに僕を見守る老執事に応え
何粒か口に放り込んでちょっとだけ笑顔を見せてやる。
そのまま噛まずに飲み込んだ。
苦手なものが好きになる日なんてくるもんか。
「残念だけど、父の手伝いがあるから僕は戻らなくちゃ」
「俺もだ」
九条さんが答えると間を置かず征司も頷いた。
だけどこちらはやっぱり一筋縄ではいかず。
「でもどうしてだ?どうしてそんなことを聞く?」
訝し気な眼差しが射貫くように薫をとらえる。
薫は嘘が下手だ。
「僕ら出かけようと思って」
思わず代わりに答えていた。
「へえ。君たちが2人で?どこに?」
九条さんがあからさま目を丸くする。
それも当然。
僕ら2人で出かけることなど
この家の誰にとっても想定外なのだから。
たまたま見たい映画が同じで――。
僕は最もさりげない答えを用意していた。
なのに一足先に嘘の下手な薫が口を開いた。
「ご……合コンだよ!」
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