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体育の授業が終われば、圭佑は急いで着替えてグランドを横切る。授業中、彰人は旧校舎に向かったっきり姿を見せていない。まだ旧校舎に居ると言う事だ。昨日の事があり、圭佑は彰人にどんな顔で会えばいいか分からなかった。彰人と面と向かって会えればその答えが分かるような気がした。
息を切らせて旧校舎裏へと辿り着く。足を止め、両手を膝につき息を整えながらも、視線は彰人の姿を探すようにキョロキョロと辺りを見渡す。彰人の姿はない。
「…彰人…。」
随分息が整えば彰人の名を呼ぶ。しかし、思った返答は得られない。もう一度、名を呼ぼうと口を開けば後ろから"ジャリッ"と砂を踏みしめる音が聞こえた。圭佑は反射的に振り返った。彰人の名を呼びかけて息を呑む。視界に飛び込んで来た姿に血の気が引く。
「…田村…くん…。」
ニヤニヤと笑みを浮かべた田村達がそこに立っていた。今まで、細心の注意を払いこの場所が見つからないように気をつけていた。唯一、彰人と二人で虐めから逃れられる場所。自分の不注意でこの場所が見つかってしまった事に酷く後悔したが、もう遅い。
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