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二人でコンクリートの出っ張りに並んで座る。圭佑は端に置いていた弁当を膝に乗せ、再び箸でつつく。彰人はその様子を黙って見ていた。いつもは購買で買ったパンやら弁当を並んで食べるのだが、彰人にその気配はない。不思議に思い圭佑は彰人の横顔を見つめる。その視線に彰人が気付けば、眉を下げ頭を掻いた。
「…昼飯代…、田村達に貸してくれって言われちゃってさ…。」
ははっ、と乾いた声で笑う。田村と言うのは、圭佑と彰人を虐めているグループのリーダーだ。暴力を受ける事もあるし、今日の彰人のように金銭や物を要求する事もある。彰人は貸したと言っているが、今まで返って来た事はない。
圭佑は自分の弁当を彰人に差し出した。彰人は弁当と圭佑を交互に見た後、一言"ありがとう"と言って圭佑から箸を受け取りゆっくりと噛み締めるように弁当を空にしていく。圭佑は何度か、隣から鼻をすんっと鳴らす音が聞こえるが圭佑は真っ直ぐに視線を向けたまま彰人の方を向く事はない。
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